2008年12月20日

「風のガーデン」最終回(第11話)

無事にルイ(黒木メイサ)の結婚式の日を迎え、父親として共にバージンロードを歩いた貞美(中井貴一)は、その様子を東京の妙子(伊藤蘭)に手紙で伝えた。そこには、実はそれが娘や貞三(緒形拳)や友人達による芝居であったこと、そして互いに芝居だと本当はわかっていたこと、でも心から幸せな時間であったことなどが綴られ、最後にもう会う事はないこと、これまでの妙子への不埒な愛情への詫びと、感謝の言葉が添えられていた。
まもなく貞美は実家へ戻り、生まれ育った部屋で痛みを除く治療を受けながら、家族の中で息を引き取る。
季節が巡り、雪解けの春。風のガーデンでの作業が再開されたある日、岳(神木隆之介)とルイは、ふと現れた子犬に導かれるように森の中を進んでいくうちに、とある一帯に「エゾエンゴサク」の花が咲き乱れているのを見つけるのだった。エゾエンゴサク、それは半年前に貞美が停めていたキャンピングカーの周りに植えていた球根だ。ルイが一番好きな花だった。

最終回は特に、最後の看病をしたいと富良野までやってきた妙子と、それを家族だけで過ごしたいと丁寧に断る貞三とのやりとりの場面、それから麻薬で意識が朦朧としながらも、子供の頃の思い出を語る貞美、じっと聞き入る貞三の場面が圧巻だった。そのひとつひとつの台詞をつむぎ出して言った作家・倉本聰もさすがなのだが、今作品に関しては、奇しくも実際に病と戦っていた緒形拳ならではの芝居が「説得力」という点で、台詞を超え、全体を引き締めたのではと思う。

物語自体は、自らの病(=死)をきっかけに主人公が最後の場所として疎遠にしていた家族の元に帰るという極めてシンプルなものだ。これだけ展開や設定・題材の目新しさで視聴者の注目を引くことに苦労しているドラマ群の中では、むしろ逆行しているほどのシンプルさなのだが、だからこそ人々の感覚・本能に直接的に訴えられたのではないだろうか。私にとって、すべてにおいて期待を裏切らない秀作だった。(むさし)
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2008年12月13日

「風のガーデン」第10話

貞美(中井貴一)を、生まれ育った自宅に迎え入れるにあたり、ひとつの問題があった。岳(神木隆之介)のことだ。彼は貞美を「天使ガブリエル」だと思っている。その天使が「死んでいく」のはおかしいし、なにより本当の事を伝えて、死んだと信じた父親が、急に現れ、そしてまた改めて死んでいく所を見るのはあまりにも酷だ、という。憂慮した祖父・貞三〈緒形拳〉は、岳を旭川の親戚のファームに一時的に預けることにし、貞美には「岳と、さり気なく別れてやってくれ」と頼むのだった。それは今生の別れを意味する。
貞美は急に旭川の農場へ行かされる事に苛立つ岳に、「そりゃ偶然だ、実は私も急に呼ばれて(天国に)発つ事になったんです。」と、会えなくなる事を切り出すが、その本当の意味を知っている視聴者の私は、そこから続く言葉や表情に、そして旭川へ出発する車の中の岳に向かって遠くからおどけたような仕草で手を振る「ガブさん」に強く胸を締め付けられた。取り乱したり号泣するような演出ではなく、その抑えた芝居だからこそ余計に主人公の哀しみが伝わってくる、そんな場面だった。

そして一方で、幼馴染のエリカ(石田えり)らの思いつきで、ルイ〈黒木メイサ〉と修(平野勇樹)が「偽装結婚式」を挙げる事になった。貞美が自らの余命を思って、娘とバージンロードを歩いてやれなかったことが心残りだと漏らしたからだ。当初、茶番だと反対した祖父の貞三も、ふと気が変わり、どうせやるなら徹底的にやりましょう!と乗り出す。父を騙すことに抵抗のあったルイは「父のために騙すのだ」という言葉に説得される。貞美はそんな彼らの計画を「嘘」と知りつつも、素直にその日を楽しみに待っていた。

次回はいよいよ最終回。物語が終わってしまう寂しさもあるが、同時にガーデンの中での結婚式は、さぞかし美しく感動的な場面になるのだろうなと、期待している。(むさし)
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2008年12月06日

「風のガーデン」第9話

貞美(中井貴一)のただならぬ体調を確かめる為、貞三(緒形拳)は、造影CT画像の入った封筒の病院名を頼りに札幌の水木医師(布施博)を訪ねた。進行性膵臓がんのステージ4B。息子が余命いくばくもない事を知らされた貞三はショックを受け、その足で旭川に向かい、姉(草笛光子)に「混乱してしまって…どうしたらいいかわからなくなってます。教えて下さい、姉さん。私、今どうしらたいいでしょうか。」と胸の内を吐露するのだった。姉は貞三に貞美を一刻も早く自分の生まれた家に迎えてやれと諭す。

なんと言っても今回は親子の和解のシーンにつきる。家族の再生が主題の一つなら、ある意味クライマックスでもあるような大切な場面だった。
キャンピングカーへ貞三がにこやかな笑みをたたえながら近づいてくる。一方、緊張の走る貞美。が、貞三は、絶縁した過去の直接的な出来事ではなく、子供たちのことや、医師としての道徳観をゆっくりと語り始め、そして不意に「うちへ帰ってこないか。」と切り出したのだ。一生許してもらえないと思っていた父からこれまでの事を逆に謝られ、さらに貞美の病気の事を知った上で、ターミナルケアを専門にしている医師としても役に立ちたいと言われた貞美は堰を切ったように泣き崩れる。“ここは泣かせどころ”というような力みを排除した芝居、劇的なBGMやカメラワークを避けて淡々と描きだす演出だからこそ二人の感情が浮き彫りになりストレートに伝わってきた。私を含め、貞美と一緒になって号泣した視聴者も多いだろう。

それにしても今にして思えば、この時すでに本当の病魔に侵されていた俳優・緒形拳は、貞三のセリフがそのまま自身へも響いていたことになる。どんな思いで芝居をしていたのだろうか…下世話ながらそんなことを思うと、その役者魂に改めて感服してしまった。(むさし)
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2008年11月27日

「風のガーデン」第8話

“思いがけない”同窓会が貞美(中井貴一)を待ち受けていたものだ。
そういえば先週の放送で、確かに幼馴染のエリカ(石田えり)が貞美に『趣向を凝らした同窓会』を企画していると言っていた。こういうことか、と感心する。

エリカに連れられて行かれた同窓会の会場は地元の寺。「誰かの葬式?」といぶかる貞美が本堂に入って目にした立て札には、なんと「故・白鳥貞美先生 生前葬」と毛筆で書かれていたのだ。葬儀屋の同級生が淡々と芝居を打つ。「本日、先生は“仏”ということになっておりますので、一切口を開くことはできません。どうぞあちらの仏の座へ。」と葬儀に参列する友人達を前に貞美は一人壇上へあげられてしまう。順番に読み上げられる「弔辞」では、級友達が貞美のかつての“悪さ”(いかに女好きで、手が早くて、助平だったか)を赤裸々に(?)暴露。やがて皆の神妙な顔つきが肩の震えと共に次第に崩れはじめ、最後は大爆笑となる。もちろん、級友達は貞美の病気を知らない。知らないからこそできる「悪ふざけ」だ。けれどそこに不謹慎さはなく、なんとも暖かみが残る場面となっている。

さて一方、息子の貞美が富良野にいるらしいと耳にした父の貞三(緒形拳)は、ルイ〈黒木メイサ〉から聞き出して、キャンピングカーを訊ねた。貞三は「富良野には二度と帰ってくるな!」という、息子に対する厳しい言葉を悔やみ、謝りたいと思っていたのだ。あいにく貞美は眠っていたが、そこで貞三は点滴を落としながら横になっている息子の姿と、CT画像、薬のパッケージを見つけて愕然となる。

来週は貞三と貞美との和解がなるかどうか気になるところ。
物語は静かに、しかし確実にクライマックスへ向かおうとしている。(むさし)
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2008年11月22日

「風のガーデン」第7話

父親である貞美(中井貴一)の突然の姿に驚いて逃げ帰ったルイ(黒木メイサ)を岳(神木隆之介)は「ガブリエル様に向かって無礼なことを。」と批難する。そしてそんなルイの態度に腹を立てた天使が二度と自分の前に現れてはくれないのではと、落ち込む岳。
身辺整理の為に東京の自宅マンションへ戻った貞美は妙子(伊藤蘭)に後の事を頼み、再び富良野へ。キャンピングカーでの生活に戻った頃、ルイが貞美を訪ねてやってきた。これまでの思いを語り合う二人。わだかまりが少しずつ解けていく。岳にもいずれ貞美が父親だとわかるのでは、というルイの問いかけに、彼は「この夏は“天使”のままで通そう。俺もこの夏は天使でいたい。」と答えるのだった。貞美は最後の時間をひっそりと家族の近くで過ごそうとしていた。

ひとつひとつのシーンが長い。いい意味で長い。じっくりと描く。丁寧な会話の積み重ねと十分な「間」を使った演出は登場人物の気持が徐々に変化していく様子がよくわかる。見ている側にその変化を納得させ、感情移入させるだけの説得力もある。淡々と展開しているようで、退屈や間延びを感じないのは脚本や芝居の良さ、映像の美しさも無論だが、その「説得力」に理由があるような気がする。
今回のルイと貞美が森の中を散策しながら互いのことを訊ね語り合うシーンは、そういう観点においても非常に上手く描かれていて個人的に気に入ったところだ。はじめこそ、自分たち家族を捨てた貞美に対しての恨み事を口にしていたルイの表情が、父親との会話を通して穏やかな優しい表情になっていくのを見ていたら、こちらまでホッとした気持ちになった。

貞美にとって残された時間の中で失いかけていた家族との絆が取り戻されようとしている。自分の人生において「罪」を沢山犯してきたことを悔いている彼が、三沢のおじいちゃん(貞三が診ていたターミナルケアの患者)のように、家族に見守られて「良く頑張ったね」と拍手をしてもらえるような最期を迎えることはできるのだろうか。あのおじいちゃんの臨終シーンにはそんな示唆が含まれているのだと思いたい。(むさし)
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2008年11月16日

「風のガーデン」第6話

夜明け前に家を出て、修(平野勇樹)の下で蜂蜜採取を手伝ってからガーデンに向かった岳(神木隆之介)は、そこで貞美(中井貴一)に遭遇する。貞美を父だと分からない岳は驚いて逃げ出そうとするが、踏みとどまり、動揺しつつも訊ねるのだった。
「…もしや、大天使ガブリエル様ですか?」

「ガブリエル」というのは、一般的に知られる4大天使の一人で、それは祖父・貞三(緒形拳)が適当に作っては岳に教えた花言葉に頻繁に登場する名前でもあった。朝もやにキラキラと反射する朝日を背に、ガーデンの青い花の中から突如現れた成人の男は岳にとってはまさに「天使」に見えたのだろう。
自分の息子にあなたは天使か?と聞かれ、咄嗟に「そうです。」と答え、また「あの、ガブリエル様とお呼びしてもいいですか?」と岳が言えば「ガブ、と読んで下さい。」と貞美。二人の大真面目なやりとりが笑いを誘う。
倉本聰は流行の言葉を駆使したり、気の利いた応酬やノリ、またネタの面白さで笑わせることよりも、日常の何気ないやりとりで人が真面目に振舞うことによって生じる可笑しさ・滑稽さを描くのが上手い。(ちなみにその最たるキャラクターは北の国からの黒板五郎だと思っている。)セリフを口にするキャラクターは笑わせる意図を持っていないだけに、根底にある切なさだったり、悲しみや憤りなどが同時に表現され、なんとも味わいのある「笑い」になっていくのだろうと思う。
貞美と岳のやりとりも、一見コミカルですらあるのに、実は余命僅かな貞美が自分を父だとはわからない自閉症の息子と対面しているシーンだと思うと、胸が痛くなるほど切ない。
今話ではこの親子の交流に時間を割いて丁寧に描いていたが、特に岳のピアノと貞美のチェロで演奏する「乙女の祈り」の場面は美しく、そして哀しく、情緒的なシーンとして印象に残る。

二人がそうしてガーデンのグリーンハウスで演奏をしている所へ、ルイ(黒木メイサ)がやってくる。ルイの方は突然現れた父にショックを受けそのまま乱暴に車に飛び乗り引き帰してしまうが…。
今回の物語はここまでだ。第6話を終え、「風のガーデン」は早くも折り返しだ。これまで同様、安定した筋運びと美しい映像で後半戦も楽しませてくれるものと期待している。(むさし)
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2008年11月07日

「風のガーデン」第5話

気になる二人の「新人」について。

一人は、本業のアーティストでは、既にその地位を得ている平原綾香。彼女は今回、主人公・貞美(中井貴一)の恋人役・氷室茜として出演しているが、本格的なドラマ出演はこれが初めてらしい。…が、とてもそうは思えない自然な演技に毎回感心している。演技をしているというよりは、素直に役として振舞っているという感覚に近いかもしれないが、いずれにしてもその芝居も、そして彼女を選んだキャスティングのセンスも見事だ。(自分が貞美なら、この彼女の愛おしさはたまらんだろうな、と/笑)
子供の頃から音楽に囲まれ、またバレエを続けていた経歴からしても、もともと「表現者」としての実力はあるのだろう。今後の活躍フィールドが、このドラマをきっかけに更に広がりそうだ。

そしてもう一人が平野勇樹。前回のレビューでも触れたが、富良野で養蜂業を営むガッツ石松の息子・石山修を演じている。もと不良で少年院で過ごした過去もあるという設定のヤンチャ青年だが、基本的に前向きで脳天気、空気を明るくするムードメーカーで、ルイ(黒木メイサ)に一目ぼれし猛アタックする傍ら、その飾らない明るさで自閉症の岳(神木隆之介)ともすっかり仲良くなってしまうような役柄だ。芝居の未熟さはあるが、役柄の勢いでうまく相殺している。「北の国から」で言えば、若かりし頃の岩城滉一演じる草太兄ちゃんのノリか。静かなトーンで展開する物語の中で、ふっと気分を持ち上げるアクセント的な役割をしっかり果たしている。

さて物語。病気の事を知った妙子〈伊藤蘭〉の夫が貞美を訊ねてくる。彼の妻と不倫関係を続けていた事があるにもかかわらず、それでも親友として心から自分を心配してくれる友人に、そして富良野に残した家族に対する罪悪感が貞美を苦しめる。徐々に仕事を続けることが肉体的に辛くなってきた貞美は周囲の勧めもあって「出張」という名目の休暇を取ることになった。
そして富良野。風のガーデンで園芸作業をするルイと岳の姿から、二人を映すカメラが森の方へ引いていく。そこに1台のキャンピングカーがフレームに入ってきたその場面で、第5話は静かに終わる。
車は貞美が二神(奥田瑛二)から譲り受けたもの。貞美は家族と和解するつもりでやってきたのだろうか、或いは最後の時間をひっそりと影から見つめるためにやってきたのだろうか(むさし)
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2008年11月01日

「風のガーデン」第4話

痛みの緩和治療で再び札幌を訪れた貞美(中井貴一)。娘のルイ(黒木メイサ)が出場する「よさこいソーラン」を見物する事も目的のひとつで、祭りの後、姪のさゆり(森上千絵)の段取りで久しぶりに対面する予定だったのだ。ところがそれを知らないルイは恋人と会うために一人出かけてしまう。失意の貞美は、翌日、故郷・富良野の町へ降り立ち、亡妻の墓や風のガーデンをこっそりと訪ねて過ごした。
東京に戻り、二神(奥田瑛二)の病室を訪ねた貞美は、余命の短い癌患者の気持ちが判るかと言う二神の言葉に、自らの体が同じ病に侵されていることを告げる。また病状を悟った妙子(伊藤蘭)は、貞美を責めた。どうして私にも隠さなくちゃいけないのか、と。翌朝、院長の元へ行く二人。そこで貞美は退職願を出し、限界まで働かせて欲しいと願い出た。

貞美が富良野を訪ねるシーンはシンプルな美しさが際立っていた。2年かけて作り上げたイングリッシュガーデン、そして富良野の風景を淡々と貞美の視線で映し出し、余分な言葉を削いだ演出は倉本作品の定番。たっぷりと堪能することができた。
また今回は女優陣の芝居にも注目。札幌に仕事で来ていた妻子持ちの男性との恋が終わったルイ役の黒木メイサ、貞美の病気を知り、衝撃を受けつつも気丈な対応をする、かつての不倫相手・妙子役の伊藤蘭など、年齢相応のそれぞれの気持ちや性格がよく演じられていて、静かに展開する物語の中にもアクセントをつけていたと思う。あ、貞美の幼馴染役で登場したふせえりも、空気を和ませる意味ではよかったか(笑)
今後の興味としては、貞美の家族再生なるか、また二神の気持ちがどう変化するのか…という主軸は無論だが、片や、養蜂業を営むガッツ石松の息子役で登場した脳天気そうな石山修(平野勇気)の活躍も気になる。出番が多いと嬉しい。(むさし)
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2008年10月26日

「風のガーデン」第3話

貞美(中井貴一)の勤務する病院へ、一度は手術後に強引に退院をして行った二神達也(奥田瑛二)が、再び担ぎ込まれ治療を受けていた。彼は世間で騒がれている大企業の株不正取引の黒幕として、検事から事情聴取の要請を受ける人物だったが、貞美は二神の病状の思わしくないことを理由に断る。平常心を装い勤務を続ける貞美自身も、隠れて個人病院で化学療法を始めていたのだが、痛みは増すばかりで思わしくなかった。自宅で痛みに堪えながら過去の記憶を過ぎらせる貞美。それは妻の死と、そして家族を顧みなかった事を責められ父親である貞三(緒形拳)から勘当を言い渡される自分の記憶…。

貞美が大学病院での医師としてのキャリアを口実に、障害を持つ息子がいる家族とのかかわりから遠ざかり、別の女性・看護士の内山妙子(伊藤蘭)との関係を続けていて、そんな状況に悩んだ貞美の妻が、ある日自殺をしてしまった…というのが親子断絶の理由らしい。おそらくはそういう事だろうと想像できる範囲の過去ではあったが、突拍子もないような大事件ではないあたりが、リアルと言えばリアルか。

最近のドラマにおいては、その「テンポの早さ」や「劇的な展開」が、そのまま「面白さ」として評価されがちだが、どうやら倉本聰は、あえてそういった風潮に抗う姿勢で本を書いているようだ。じっくりと見せるというのは、細やかな描写に誤魔化しが効かないという意味で、実力がないとできない事だと思うが、そのあたりに倉本氏の自負を感じる。
ちなみに、これまでの3回のラストシーンはいずれも、実に静かな場面でふわりとフェイドアウトするパターンだった。次週へ繋げるには、もう少し“引っかかり”を残して寸断するように「続く」とするのが演出としては定石だろうが、まるで就寝前に読んでいる小説に「今日はここまで。」と栞を挿んで閉じるが如くである。こういう手法も「大人が楽しめるドラマ」を意気込む氏の狙いなのかもしれない。(むさし)
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2008年10月19日

「風のガーデン」 第2話

貞美(中井貴一)は、学会で出かけた北海道で地元の医師仲間(布施博)に、自らの身体に起きた異変を確認すべく精密検査を依頼した。そこでの結果もすい臓がんで、そのステージも予想以上に進行している事が判明した。いわゆる延命以外の治療が施せない状況に動揺する貞美は、それを勤務先や周囲には知られたくないと振舞いつつも、動揺が見え隠れしてしまうのだった。一方、富良野では飼っていた犬の「ほたる」(“ほたる”って名前は遊び過ぎでしょ…/汗)が、老齢でひっそりと死を迎えていた。

大好きな犬の死を悲しむ岳(神木隆之介)に、祖父の貞三(緒形拳)が、生命の「死」というものの意味を優しく語りかけるシーンは「台詞」というものを丁寧に捉える倉本聰の言葉と、そして緒形拳の温かい芝居が活きていた。難しい役に奮闘している神木にも好感が持てる。

今回のドラマは、生死をストレートに見つめるものである。人が病に侵されて死を意識することも、飼っていた犬が老齢で死んでしまうことも非日常的なことではない。そういう意味で物語の中で起こる出来事は決してドラマチックではないのだが、けれど日常的だからこそ視聴者は時には我が身に置き換えたりしながら素直に感情移入できるわけで、倉本ドラマの魅力の一つはその部分だとも思っている。

ちなみに今回、貞三(緒形拳)らの自宅となっている診療所は、かつて「北の国から」でも五郎の妻・礼子が担ぎこまれたり、看護学校を卒業した娘の蛍を働かせようと頼んでいた「財津病院」として登場した富良野市内に実在(病院名は異なるが)する木造の洋館風の建物だ。なかなかおしゃれなこの建物、倉本氏も気に入っているのか、再登場が嬉しかった。(むさし)
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ラベル:倉本聰
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2008年10月13日

「風のガーデン」 第1話

残念ながら放送開始の数日前に出演者の緒形拳が亡くなった。彼の出演作を見つくしたと言うほどのファンではなくても、激しい役からコミカルな役まで魅力的にそして存在感たっぷりに演じることのできる貴重な役者だという事に異論のある人は少ない筈だ。そして今回その緒形拳の遺作となってしまった「風のガーデン」は、また一方で脚本の大家・倉本聰が「これを最後にもうテレビドラマはやらん!」と宣言した、もとい、最後のつもりで臨んだと言われる、いわゆる富良野三部作(北の国から、優しい時間)としてしめくくりに取り上げた作品であり、そのような前評判もあってか初回の視聴率は木曜10時にしては20%を超えた快挙となったようだ。
ま、数字はいいか。

さて、富良野を舞台に絶縁していた親子の絆の再生、そして生きること、死ぬことを描く物語である。続きを読む
posted by むさし at 21:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 風のガーデン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする